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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-137


(千歳は、必死だった。 いつも結っている髪は乱れ。
服はほつれ。 頬には、泥がついていた。)

(だが、その瞳は真剣に。 闇夜の中で、前を向き輝いた。)

[「落ち着いて。」]

[「扉は、開かれた。」]

[「必ず、守ってくれます。」]

(誠司の言葉に、千歳は頷いた。)

「うん。」

カチャンッ キイッ・・

(仄かな公衆電話の灯りの元から、千歳は。 夜の闇の中へ、走った。)

***

「この子はきっと、普通の子ではない。」

(その言葉は、夏樹の心を揺さぶった。)

『どれだけ、母を苦しませただろう。』

(記憶を旅し、夏樹は。 少しずつ、幼い日のことを思い出した。)

「僕たち親子は、人目を避け。」

「時には、友の力を借り。 世界から離れるように、ひっそりと暮らして来た。」

「だが、母は、隠れて生きることはしなかった。」



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