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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-139


(夏樹は、深い紺色の瞳で瞬き。 緊張と興奮の混じる面持ちで、
頷くと。 お面をかぶり、小さな手を母の手と重ねた。)

「ん・・。」

(隣で千波は、無邪気にはしゃいでいた。)

「ちなみちゃん、ねこさんのお面〜♪」

(千歳は、もう片方の手で、千波を引き。 微笑んだ。)

「ふたりとも。 お小遣いあげるから。 好きなものを買って。」

(千波は、ばんざいをして、飛び上がった。)

「わ〜い♪」

(夏の夜の、賑わう熱気。 美味しそうな、屋台の煙。 お面越しに見える、
揺れる提灯の明かり、触れ合うほど混雑し。 行き交う大きな人々の影。)

(祭ばやしに、笑い声。 闇夜に浮かび上がる灯りは、どこか幻想的で。
夏樹を夢の世界に運ぶ。)

「りんご飴にするって。」

「夏樹は?」

(千歳は、夏樹の目線にしゃがみ。 無口になってしまった夏樹に微笑んだ。)

「・・する。」

(こくんと頷き。 小さな手で、お小遣いを差し出した。)

(夏樹なりに、喜んでいたのだが。 千波と違い、感情を表に出さない子供だった。)

「ふふっ///」



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