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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-140


(千歳は微笑んだ。)

「るるららっ るるんっ♪ るるらら〜♪」

(千波は上機嫌で、飴を片手に、可愛らしい鮮やかな浴衣の袖を振って。
歌いながら、歩いた。)

(お祭りの帰り道、人波から遠ざかる。 遠くなる笑い声と、明かりが。
名残惜しくて、自分たちの歩む先が、仄暗い小道が。
夏樹にとっては、切なかった。)

「楽しかった?」

(母の温かな手に引かれ、夏樹は、後ろ髪引かれる思いで頷いた。)

「・・うん。」

(千歳は微笑んだ。)

「また、来ようね。」

「夏樹〜。 大事に飴とっておいて、おみやげ?」

(何気なく尋ねた千歳に、思いがけない答えが返って来た。)

「・・お父さんのぶん。」

『・・!・・』

(千歳は、夏樹の前にしゃがみ。 両腕に触れた。)

「夏樹のがなくなっちゃうから。 食べな。」

(夏樹は首を振った。)



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