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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-164


【・・はっ・・。】

(粒樹は、明るみ始めた空を見上げた。)

(彼方に。 何かが迫るのを感じた。)

シュルッ・・

(粒樹は、眠る聖を残し。 小さな素足で、花弁の上を歩いた。)

(淡い花弁のように、薄ピンク色に色付く、レースのドレスが。
風に揺れ。 深い紺色のソバージュの短い髪が。 靡いた。)

【怖かったの・・。】

【“闇”に向かう勇気を。】

【わたしに、頂戴。】

(淡く、白い朝もやが、空から。 ライトのように、
朝日を受け。 白く輝く。)

(粒樹は、その光の中に。 一歩足を踏み入れた。)

【・・すぅっ・・。】

(握りしめた両手を、胸元に掲げた。)

(目を閉じ、触れる胸元で。 美しいビーズ飾りが音を立てた。)

(高鳴る心音に、粒樹は息を整えた。)

【・・わたしを・・。 愛してくれて・・。】

(胸の奥に眠る輝きを、粒樹は感じた。)



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