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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-176


(粒樹は、追いかけ辿り着いた聖の頭上で。
“呪い”を一身に受け。 夏樹を守った。)

「やめろ! 粒樹!」

(巨大な“闇”の中で、結晶化した粒樹は。
伸ばしたその小さな指先から。 可愛らしい裸足の爪先から、重なり合うドレス。
小さな唇。 祈るように閉じた睫毛の瞳から。 伝う涙の滴までも。)

(氷の様に煌めき結晶しながら、輝きを放ち。
聖の見上げる頭上で。 ためらいなく瞬時に、粉々に砕けた。)

「ああああ・・!」

ガシャーンッ・・!!

ザババババーッ・・!!

(粒樹の力が、“闇”を砕き。 命を失った夏樹に、
生命を与えた。)

(巨大な“闇”は、粒樹の力で、透明な滴となり、海に戻り。 波となり、
街から引いた。)

(一瞬で、辺りを夜に変えていた、“闇”の呪いは去り。
辺りは、再び。 青空を取り戻す。)

(太陽の光が戻った、辺りの様子は、一変していた。)

(わずかに残った、“闇”の痕跡の他、静かな。 海岸がそこにあった。)

バシャシャッ・・ ピシャンッ・・

ピチャン・・

『あの海で、見た景色は。 二度と、忘れることが出来ない。』



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