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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-181


(聖は、腕の中で眠る夏樹に。 橘が、術を施す間。
不安にならぬよう、声をかけ。 励ますように、静かに。
背中をさすった。)

「・・・。」

(聖の中に甦る、記憶もまた。 聖にとって、脅威だった。)

(夏樹への愛情が、聖の胸を焦がした。

それは、粒樹への愛と、天秤にかけられるものではなかった。)

(だが、聖は、そのことから、目を背けた。

粒樹を取り戻すために、戦わねばならないのは、

また、自らの愛情そのものだった。)

ザザーンッ・・

(記憶の海の中で。 波音を聞き。 聖は、腕の中の。 夏樹の重さを感じた。)

(脈打つ心音。 風が揺らす、深い紺色の髪。)

(白い肌に、閉じた瞳。 無防備に、預けられた命が愛しく。)

(聖はその白い頬に、指先で触れた。)

ザザーンッ・・

『今、悲しみの中にいるなら。 幸せになれるということ。』

(視線の先に、輝く真夏の太陽と。 青空。 青い海が広がっている。)

『今、孤独なら。 誰かと出会うということ。』



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