HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-188
***
『手を伸ばしては、いけないとわかっていた。』
『だけど。』
(幼い夏樹は、降りしきる雪の向こうに、舞う花弁を見た。)
「夏樹くん!」
(春の季節と共に、紫苑が夏樹を迎えに来る。)
(紫苑は、花弁の向こうから。 夏樹に手を差し出した。)
「・・・っ。」
(幼い夏樹は、凍える白い手を。 紫苑に伸ばした。)
(指先が、触れる一瞬。)
・・リーン・・
(夏樹の意識は、記憶の海から、現実に引き戻された。)
***
「はぁっ・・。 はぁっ・・。」
(夏樹は、コテージの中で。 目を開けた。)
(長い夢から覚める様に、四肢がきしむ。)
「うっ・・・、うっ・・。」
(息が乱れ。 上手く呼吸が出来ない。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』