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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-192


「・・っ。」

「ははっ・・、どうしよう・・止まらない。」

(夏樹は、菖蒲の腕の中で。 止まらぬ涙に、
僅かに表情を緩めた。)

「しばらく、このままで。」

(菖蒲は、微笑み。
白手袋の手で。 夏樹の背中を、ますます強く。 抱き締めた。)

「ははっ。」

(夏樹は、菖蒲の優しさに、涙ながら笑顔をこぼした。)

(菖蒲もまた、黒縁眼鏡の奥で、滲む瞳を閉じ。
微笑んだ。)

『全ての記憶を伝えることは、とても出来なかった。』

『それでも、今は。』

『このままで。』

(二人は、互いを思い。 また、明るい未来を信じた。)

「だめだ。 余計に、止まらない。」

(目を閉じ、笑う夏樹に。 菖蒲は、目を細めた。)

「それは。 申し訳ございません。

夏樹様。」



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