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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-21


サクッ サクッ

『ここは、僕の。 心の中だ。』

(夏樹は、その場所を確かめるように、深い紺色の瞳を細め。
一本の大きな枯れ木を見つめた。)

『そこに居るのは、子供の頃の僕と。』

『粒樹だった。』

***

「ひっく・・。 ひっく。」

「・・かえりたい。」

(大きな枯れ木の下で。 幼い夏樹は泣いていた。)

【・・今はまだ、還れないの。】

(粒樹は優しく、辛抱強く。 涙にくれる小さな夏樹を抱きしめた。)

「ひっく。 どうして・・?」

【彼女が、迎えに来るから。】

(粒樹は、微笑んだ。)

【聖が、わたしを迎えに来たように。】

(雪の中にあっても、夏樹は冷たさを感じていなかった。 粒樹が夏樹を抱きしめ、
守っていた。 真っ白な淡雪に、舞う。 幾重にも重なる淡いピンク色のレースの
ドレス。)

【それまで、わたしがあなたを守る。】



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