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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-34


『これは、ソラが生まれるより、ずっと前の出来事だろう。』

『粒樹が生まれる前だ・・。』

***

ザァァァァーッ・・

(異国から訪れた男の目に、開かれた景色は、驚きだった。)

「・・花・・。」

(男の国では、今では一輪でさえ、見ることの出来ない、花という存在。)

(それが、惜し気もなく、この国では満開だった。)

「あなたの国では、植物は存在しないと聞きます。」

「どうぞ、よく見て行って。」

(女王サラは、美しい白いドレスを翻し、繊細な装飾の煌めく、手を差し伸べ、
男に花々を示した。)

(眩い自然。 光にあふれる青い空。 澄んだ空気。)

(花の香り。 活気づく街。 人の温かさ。)

(すべてが驚きに満ち、男は茫然とした後。
鋭い、赤い瞳で微笑み。 警戒心のない女王の横顔を見た。)

『・・俺が、奪いに来たとも知らずに・・。』

(男は、案内され。 城の裏手にある、ひと際美しい花の森に足を踏み入れた。)

「リザ。 ルナ国より。 使者が来られました。 聖なる樹の力を知りたいそうよ。」



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