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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-35


(深紫色の靴が、踏みしめたのは、一面に敷き詰められ、
舞い散った、ピンク色の花弁。 息を飲んだ男が、顔を上げた先に。
頭上に、広がっているのは。 聖なる樹の花の、海だった。)

「・・・っ。」

(女王の呼びかけに、振り向いた、一人の女性。
薄紫の長い、ソバージュの髪。 淡いピンク色の中に、一点花開く
黒いドレスが、鮮烈に、飛び込んでくる。)

『黒い瞳が、見つめ。』

『彼女の黒い唇が。 微笑んだ。』

『途端に、彼女の持つ、強い力を感じた。』

『・・俺は・・。 その“魔力”に惹かれたのか・・。』

(女王は、二人の魔法使いを紹介した。)

「こちらは、“闇の樹”を守る魔女。 リザ。」

「そして。 こちらが、“光の樹”を守る魔導師。 セナ。」

「ここは、次の世代を担う、“闇の樹”の森。」

「リザが守り育てているの。」

(女王は、優しさに満ち。 温かな瞳で、男を見た。)

「あなたの国の、力になれるわ。 フェルゼン。」

***

『・・フェルゼン・・!』



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