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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-44


『それがはじめて、胸によみがえった、』

『父が口にした。 母の名だった。』

***

(夏樹は、記憶の波にもまれ、両手で頭を抱えた。)

『父と母が出会い、』

『僕が生まれた。』

『そのせいで、』

『すべてが、変わった。』

(目を閉じ。 鼓動に耳を傾ける。
胸元に、熱を帯びる指輪の奥で。 確かに、鼓動していた。)

(血の熱を、感じないほどの、冷たい身体は。)

(死すべき存在だった。)

***

『・・ああ・・っ。』

(その先を、一度に思い出すことは出来なかった。 思い出そうとする夏樹に、
強い記憶が、フラッシュバックのように流れた。)

ゴォォォッ!!

(燃え盛る炎の中を、駆けてゆく小さな素足。)

【・・はぁ・・っ。 はぁ・・っ。】



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