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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-47


「お嬢様が好きだと言った言葉が、

信じられないのですか?」

(夏樹は、菖蒲から目を逸らし、気持ちを抑えた。)

「・・そうじゃない。」

「能力者は、簡単に。

人と触れ合えない。」

「相手の命を奪うことがあるからだ。」

(頑として動かない主人に、菖蒲は苛立った。)

「それは、極端な場合です。」

(望んでいながら、踏み出せない心が、やるせなかった。)

「聖は、粒樹の命を奪ったと思っている。

晃さんでさえ、そうだ。

人の寿命など、誰にも計れない。」

「でも、少なからず影響を与えた。」

(夏樹は、そのことを知っていた。)

「僕は、それを知っているのに、

どうして願ってしまったんだろう。

街へ来たいなどと。」



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