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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-50


「“闇”を無くすことが出来たら、その後、告げようと思っているのですか?」

「夏樹様がいつもおっしゃっているではありませんか。 今ですよ・・。」

「いつまでも、傍にいてくださると、思ってはいけません。」

「お嬢様が。」

「いなくなっても良いのですか? いつでも、同じではないんですよ。」

(菖蒲は、夏樹の幸せを願った。)

(こんな時だからこそ、大切にして欲しかった。)

サワサワサワッ

(海風が、優しく頬を撫でた。)

「くすっ。」

(夏樹は、菖蒲の言葉に。 まるで、頬を殴られたような気がした。)

「菖蒲と記憶を旅するみたいだな。」

(菖蒲は、黒い四角い眼鏡の奥で、瞬いた。)

「え?」

(夏樹は、甦った記憶を、思い起こした。)

「ソラの戴冠式に起こったという“闇”の呪いが、

僕をかばった粒樹ではなく、僕に直接届いていたなら、」

(紺色の瞳が、瞬いた。)



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