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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-52


ギュッ・・

(菖蒲は堪え切れず、胸元を掴む夏樹の手を。 思わず、白手袋の手で、
その上から握り締め。 その胸の奥にあるだろう、“鍵”の存在を思い、
夏樹の胸を。 強く、押さえ付けた。)

「夏樹様。」

「誰にも渡さないと、私に誓ってください。」

(菖蒲は、夏樹に気持ちを分かって欲しくて。 必死だった。)

「あなたはもっと、素直になって良い。

迷っていては、勝てないと。 あなたはおっしゃっていた。」

「ならば、

私のために、生きてください。

私の夢は、夏樹様の夢を叶えることです。」

(真っ直ぐな菖蒲の心に、夏樹は顔を上げた。)

「強引だな。

そんなことを、主人に命令する執事なんて

聞いたことがないよ。」

(夏樹は、菖蒲を間近に見た。 深い紺色の瞳が、
太陽の光を受け。 優しく、微笑んだ。)

「前向きに、努力する。」



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