HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-54
『フェルゼンは、まだ。 “鍵”の在り処に気づいていない。』
『リュウジュが守っているから・・。』
『でも、あなたの心が、“彼”に近付けば・・。』
『やがて、気づくかもしれないわ。』
(紫苑は首を振り、ぎゅっと胸元を掴んだ。)
「・・そんなことさせない。」
(声は語り掛けた。)
『フェルゼンの魔法に逆らえば、
あなたの心が壊れるかもしれない・・。』
『そして・・。』
『紺色の瞳の“彼”を愛せば・・。』
『あなたは、あなたで居られなくなる。』
『私のように・・。 醜い心に支配される・・。』
(紫苑は、水面を見つめた。 映し出される心の向こうに、
薄紫色になびく、長いソバージュの髪の女性がいる。)
「・・あなたは?」
『私は・・。 私の中に残る、最後の本当の心。』
「・・美しい心で、いなければだめ?」
(紫苑は、そっと微笑んだ。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』