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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-71


(千歳は、首を振った。)

「あそこには、戻らないわ。」

「ここは、お父様が力を貸してくれた。」

「お母様は、わたしを嫌っているから。」

(物憂げに考えを巡らせ。 千歳はそっと、テーブルに水を置いた。)

「誰でもいいから、連れ添わせて。」

「わたしを追い出したいの。」

(依子は顔をしかめた。)

「ど〜、聞いても。 どれも、良い縁談だったよ。」

「だれも、かれも断って。」

「家まで飛び出して。」

「ここで。」

「あんたは、一体。 誰を待つっていうの?」

(依子は、いつになく真剣な瞳で。 千歳を見つめた。)

「・・・、さあ?」

(わからないという様子で、千歳は肩をすくめた。
この質問になると決まって、答えを見いだせないのだ。)

「あきれた。 おとぎの国の、お姫様じゃないのよ?」



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