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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-73


「おいしい! 最高っ! あんた才能あるよ。」

(依子は幸せそうに頬張った。)

「ふふっ/// 良かった。」

(一人キッチンに立つ姿を見て。 依子は思い描いた。)

『あたしは、あんたがただの。 幸せなお嬢様じゃないって知ってる。』

『あんたの母親は、良い家に嫁いだけど。 早くに亡くなっちまった。』

『新しい母親は。 あんたが、どんどん先妻に似て。

綺麗になって行くことに、我慢できなくなった。』

『いんや、初めから。 あんたを愛せなかった。』

(依子は微笑んだ。)

「あんたは変わってるよ。 昔から。」

「あたしなんかに声をかけたり。」

(美しくカールする、睫毛の下で。 依子の妖艶な瞳が、瞬いた。)

「捨てられた子犬みたいな顔してたんだもの。」

(千歳は口を尖らせた。 依子は笑った。)

「うちの家業を聞いても、ビビりもしない。」

『あたしの寂しさに、気づいてくれた。』

「・・、応援してる。 がんばんなよ。」



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