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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-8


(夏樹は、受け取れなかった。)

「ん?」

(ソラは、夏樹の気持ちに気づけず。 瞬き、笑った。)

(紫苑は、戸惑い立ち止まる夏樹の前に、立った。)

「・・、夏樹くん。」

「お誕生日おめでとう。 これは、わたしの気持ち・・。」

「上手く、出来なかったかもしれないけれど。」

「心を込めたの。」

「・・あなたのことが。」

「大好きだから。」

(紫苑は、茶色の瞳で夏樹を見た。 紫苑は、告げずにはいられなかった。
透明な夏樹の肌は蒼白で。 深い紺色の瞳は、闇夜に滲んでいた。)

「・・・っ。」

(紫苑は、言ってしまったあと、小さく震えた。)

(言葉は、こぼれ落ちてしまいそうで。 心を表すのに、十分ではない。)

(今、声をかけなければ、夏樹がどこかへ行ってしまうことを予感していた。)

(出会いは偶然で。 一瞬で。 逃してしまえば、永遠に
訪れなかったかもしれなかった。 紫苑は、すべてのことに感謝した。)

(震える指先で。 そっと、贈り物を差し出した。)



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