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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter101 『8月1日(懐古)』 101-91
カタンッ
【指輪・・。】
(瑠衣は想いを巡らせた。 忘れ去られた記憶の遠く。)
【一番大切な指輪は、置いてきた。】
(自分の手を見つめる。 二つの樹が絡み合う、紋章が描かれた、
王家の銀の指輪は。)
(“闇の魔女”に導かれ、異界の門をくぐる時。 宮殿に残して来た。)
(上手く行けば、次の女王となるべき、姫。 リュウジュの元に渡ったはずだ。)
【出来た。】
(瑠衣は、一つのキャンバスに想いを込めた。)
(幾重にも重なる、鮮やかなピンク色。 残された僅かな記憶の中に。
今でも鮮明に残る、忘れられない景色。)
【喜んでくれるかな・・。】
(瑠衣は最後に、青色を筆に乗せ。 右下に、小さくサインを描いた。)
(青い文字は、流れる様な筆記体で、RUIと書かれていた。)
(いつか、千歳に見せたい景色だった。)
(ピンク色の絵の具を頬に付けたまま。 瑠衣は、家を飛び出した。)
(自分が持っている物など、大したものはない。
千歳のために、出来ることも。)
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