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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-121


(夏樹は、目を閉じ、カップの中のソーダの香りに想いを馳せた。)

「母が、ラベンダーソーダを作っていたんだ。」

(爽やかな香りと一緒に、弾ける炭酸が、夏樹の肌に当たった。)

「(こくっ)・・、おいしい!」

(鼻に届く香りと、喉に染みる冷たさを噛み締め。 夏樹は、目を細めた。)

(こうして、紫苑と並び、ソーダを飲み、夏樹の胸に、想いが湧き上がっていた。)

「僕もこんな風に生きられたらって・・、思った。」

(紫苑は、瞳を輝かせた。)

「え・・?」

(夏樹はソーダを片手に、穏やかに微笑んでいた。)

(子供たちの声が、行き過ぎる。 家族連れは、幸せそうだった。)

『もし、僕が今日生きているのなら、

それは、猶予を与えられたんだ。』

「誰かを、笑顔に出来たらって。」

『こうしている今も、生きるために、戦っている人がいる。

戦い、生きている人がいる。』

***

(彩は、ヒールの音を響かせ。 議事堂の地下から、階上へ出た。)



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