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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-127


(夏樹は、自分の心に気づいていた。)

(だが、どうすれば良いのか。 分からなかった。 たった一言。
告げることが、難しかった。)

『僕は、感謝した。』

(ラベンダーの香りが、夏樹を、遠い記憶に誘った。)

***

「夏樹には、夢がある?

どんな夢?」

(幼い夏樹の手を、温かな母の手が握っていた。)

(もう、その温もりはない。 深い紺色の瞳が、手の中の、
鮮やかな紫色のソーダに、映る記憶を見つめた。)

(記憶の中の、幼い夏樹は。 戸惑い、母を見上げた。)

「もしも、かなわなかったら・・?」

(母は、穏やかに微笑んだ。)

「夢は、叶うのよ。 夏樹。」

「夢はね、形を変えてゆくの。

夏樹が一番望んでいる形に。

一番、幸せになれる形に。

気づいてゆくのよ。」



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