HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-130


「聖。」

(夏樹は、呟いた。)

トットッ

(丁度その時、お祭りの広場に並ぶ、店の向こうから、ソラの声がした。)

「夏樹!」

「お〜い! そろそろ、花火が上がるぞ。」

(夏樹は、顔を上げた。)

「うん。 行こうか。」

(夏樹は、紫苑に微笑み、立ち上がった。)

(紫苑は、笑顔で、頷いた。)

「うん!」

(紫苑は、夏樹の答えを聞けなかった。 それでも、夏樹が隣に居てくれることが、
答えのように、思えた。)

***

(夏の風が、雨の香りを乗せ、夏樹を。 紫苑を。 皆を包み込んだ。)

(潮風の混じる、雨風は、心地良く。 熱気を冷ますように、静かに流れる。)

(小雨に、花火は上がるだろうかと気にしながら、穏やかになる心に、思い出が甦った。)

「風に、好きに触れてごらん。

好きにしていい。 自由に。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ