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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-141


(静寂は、一瞬で。 紫苑は、その言葉を予期していなかった。)

(僅かな時。 夏樹は、ただの人間として。
初めて、そこに、存在していた。)

(夏樹自身も、そのことを、予期していなかった。)

(ただ、口をついて、形になった。)

(何も、考える余裕は無かった。)

(それが、最後を。 もたらすとは、思いもしなかった。)

ヒュー・・

ババババババッ

ドーンッ

ドーンッ

(紫苑は、驚き。 信じられない表情で。 夏樹を見た。)

「君が、好きだ。」

(最後の花火の前、僅かな静寂の中。 聞こえた夏樹の声が、
紫苑を震わせた。)

(紫苑には、もう、何も見えなかった。)

(考えることは出来ず。 ただ、せきを切った様に、あふれ出す心のままに。
夏樹を両手で、抱き締めた。)

「・・・っ、・・・っ。」



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