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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-151


ドドドッ ドドドッ

(激しい和太鼓のバチさばきに、雷鳴がとどろき。 動物の仮面をつけた舞手たちは、
美しい着物姿で。 力強く舞った。)

(観客を魅了する、魂を揺さぶる音に。 雨に煙る提灯の明かり。)

(舞台は熱を帯び。 嵐の中の、力強い男たちの演奏に。
稲妻が光っても。 もう帰る者は少なかった。)

「こいつら・・、人間・・?」

(音々は、寒気を覚え、警戒し。 鋭い黒い瞳で、舞台上の人々を睨んだ。)

(途端に、)

(稲光に、土砂降りの雨のように、強い流れが。
空から、舞台に降り注いだ。)

「・・!」

(それは、雨ではなかった。 例えるなら、黒い洪水に見えた。)

「音々ちゃん・・っ!」

(麗は、強く。 後ろから、音々の腕を引いた。)

(轟音を上げ。 空から降り注いだ“闇”は、
舞台の奏者と、舞手を巻き込み。 観客席へと、雪崩れ込んだ。)

ゴワッ バキバキバキバキッ・・!!

(祭に興じていた人々は、激しい流れに、気づけなかった。
音々を抱き留め。 舞台と、洪水を見つめる、麗の視線の先で。
飲み込まれる、奏者と舞手が。 獣に姿を変えた。)



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