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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-158


(菖蒲の傍で、静乃が通信機を手にした。)

[「夏樹くん。 数馬くんと、春日さん一家が一緒に居るの。」]

[「お願い、行って。」]

(静乃の言葉に、夏樹は、瞬時ためらいながら、苦渋の決断をした。)

「・・・っ!」

ダッ

(雨が、白いシャツを濡らす。 水たまりを蹴る、スニーカーが、
風を纏い、夏樹を前に進ませた。)

(だが、頭上で、闇夜を照らす、稲妻が。
あちこちで、戦闘が起こっていることを、映し出していた。)

[「白くんに、晃くんの所へ、行ってもらうわ。」]

(通信機から聞こえる静乃の声に、夏樹は頷いた。)

「わかった。」

(白い指先が、自らに苛立つように、通信機を切った。)

「・・はぁっ。」

(滴る雨に、夏樹は、顔を歪めた。 雫を払い。 深い紺色の髪を掻き上げる。)

(夏の熱を冷ます、雨は。 人々から、幸せを覆い隠し。
激しく打ち付ける先は、見えず。 稲光が、暗闇の中に。
目を背けたくなる現実を、見せた。)

(夏樹の見上げる、空の彼方まで。 覆い隠す、結界が無数に広がっている。)



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