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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-16


シャーッ

(心地良い滴が、青葉にかかる。)

「誠司さん。 雨が降るみたい。」

(誠司は瞬き、手を止め、蛇口をひねった。)

キュッ

「そうですか。 良い青空ですけれど。」

「少し、風が強くなりましたね。」

(背の高い誠司は、こげ茶色の髪を拭い。
額の汗を光らせ。 遠く青く見える海岸線へ、
意識を向けた。)

(熱い太陽が照らす、丘の上に。
青空と白い雲の向こうから、強い風が吹き抜け。)

(誠司の白いシャツを揺らした。)

(心地良く、肌に触れる風は。
夏樹が元気でいることを、伝えている気がして。
誠司は嬉しかった。)

[「ゲリラ雷雨の可能性があります。

各地の予報を確認して行きましょう。」]

(誠司は、ふと。 自分がいかに夏樹に想いを掛けているか
気づいた。)

「不思議なものですね。 こんな思いになるなんて。」



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