HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter102 『8月1日(継承)』 102-176
(窓ガラスの侵入口から、顔を出した、恐ろしい“闇”を、
うさぎのぬいぐるみ型の土の戦士が。 可愛らしい手で、引き離した。)
【ゴォォーッ!】
(“闇”の力はこれまでよりも強く。 巨大に開いた無数に牙を持つ口が、
うさぎの首を噛み切り、鋭い爪を持つ獣の腕が、戦士を。 無残な土塊に戻した。)
「!」
「くっそっ!」
(数馬は、悔しさに歯噛みした。)
「数馬くんっ!///」
「きゃぁっ!」
(蒲公英は、叫んだ。 “闇”は再び、勢いを増し。 破られたガラス窓に、
飛び付いた。)
ビシャッ・・ ガガガッ!
(一匹が、窓ガラスから顔を突き出し。 長い舌で、中にいる人間の香りを探る様に
呼吸した。 もう一匹が、我先にと。
狭いガラスを突き破り。 穴を広げる。)
「あなたっ・・!」
(桜は青ざめ、蒲公英を抱えた。 窓は破れ、ゴンドラは、崩れ落ちそうに
揺れた。)
(数馬の視線の先で、土塊に変わってゆく、動物たち。 窓の外、ゴンドラを支える
鉄の柱は、しがみ付く無数の“闇”で、黒く覆われ。
数を増す、黒い怪物が。 残された一つのゴンドラを目がけ。 群がっていた。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』