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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-195


(夏樹は、痛みに、胸を掴んだ。)

ザー・・ッ

(降りしきる雨に、うつむく頬は、髪は。 濡れ。
雨粒を、振り払うことも、出来ない。)

「う・・っ。」

(夏樹は、雨の中。 遠のく意識で。
眼前に塞がる、クリーム色の扉に。 触れ、強くなぞった。)

「はぁ・・っ。 はぁっ。」

(扉は、固く閉ざされ。 聖の心を開くことは、出来ない。)

ピッ

[「夏樹様。」]

ザー・・ッ

(強くなる雨音の向こうに、通信機から聞こえる菖蒲の声が。
夏樹の目を開かせた。)

「・・菖蒲。」

(紺色の瞳が、煌めきを取り戻す。)

[「紫苑様の元へ、戻って下さい。」]

ザー・・ッ

[「“闇”が増え。 結界が、壊れそうです。」]

(静かな菖蒲の声が、危機を伝えていた。)



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