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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-213


(だが、晃は笑った。)

「時雨。 珍しいな、お前が、戦場に足を踏み入れるなど。」

(晃は笑い、肩の力を抜くと。
頬に受ける血も、体中の痛む傷も忘れ、雨が濡らし始める。
地面に、身体を預けた。)

(見上げる眼前には、鋭い時雨の視線がある。)

(瞬く晃の瞳に、雨粒が弾ける。)

(滲む視界の先で、時雨は、怒っていた。)

「あなたは、馬鹿か。」

「確実に死んでいた。」

(時雨は、半月型の眼鏡の奥で。 怒りを滲ませ。
白手袋の両手で、晃を、強く地面に押し付けた。)

「あいつは、確実にお前を殺す。」

(晃は、痛みにむせ、笑った。)

「(ごほっ。) はっはっ・・。 その様だ。

あの《魔法》とやらは、俺を殺すまで。」

「止まらんだろう。」

(晃は地面に横たわったまま、目を細めた。)

(まるで、時雨が晃を攻撃し、責め立てている様だ。
善の他に、もう一人。 遠く、その様子を見ている者がいた。)



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