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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-216


(怒りに湧く、瞳は赤く燃え。 晃だけを見ていた。)

ポチャンッ・・

サーッ・・

(雨は降りだし、
石灯籠の上に。 敷石の上に。 影を残す。)

(静かに、破られた幔幕の下に。
姿を現した者が居る。)

ザーッ・・

(雨音に、静かに歩む、草履の足。
黒い袴に、長い黒髪がなびく。)

ポウッ

(灯籠の炎に、浮かび上がる黒袴の青年の姿は。
仄かな残像の様でありながら、しっかりと。 質感を帯び、
幔幕から、黒い鳥居へ。)

(破壊された、本殿の様子を。
横目に見た。)

(だが、表情を変えず。
砕けた門の傍で、身を寄せる、艶と楓に歩み寄った。)

「!」

「兄上。」

(艶は、息を飲んだ。)

(青年の手には、和傘が握られていた。)



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