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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-237


(雨に走り込んできた、夏樹の腕を掴み。
自らが身を隠していた、アトラクションの建物の。 狭い路地に、
夏樹を引き込んだ。)

「(はぁっ)・・! 狐次郎!」

(不意に両腕を掴まれ、深い紺色の瞳は、困惑し、狐次郎を見上げた。)

「国のスパイを買って出てみりゃ。

この有り様だ。」

「ひっひっ。」

「泣かせるね。」

「良い舞台を。」

「用意しやがる。」

「分かってんのか? おめぇ。」

(雨音が、二人を隠す。 底知れぬ“闇”を秘めた、深い紺色の瞳は燃え。
息が掛かる距離で睨む、狐次郎の吊り上がる瞳を映した。)

「狐次郎が、僕を捕まえるか?」

「俺じゃねー。」

(狐次郎は、夏樹を全力で押さえ込んだが。 細く白い夏樹の腕は、
満身の力で、狐次郎をはね除けようとしていた。)

「見逃してくれ。」

「馬鹿野郎が。」



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