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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-238


(揺れる、紺色の瞳を捉え。
夏樹を抵抗できぬ様、路地の外壁に、身体ごと押さえ付けた。)

「行かせたら、死ぬじゃねーか。 ひっひっ。」

(夏樹は、怒りを覚え、狐次郎を睨んだ。 だが、狐次郎は譲らず。
夏樹の冷たい身体を、全身で受け止めた。)

「離してくれ。」

「離せるか。」

「!」

「僕を、かばったら、お前も命が無いぞ。」

(深い紺色の瞳の内側に、“闇”が灯るようで、怒りに燃える白い肌に、
深い紺色の瞳を包む。 睫毛に。 頬に。 零れる雨粒に、狐次郎は息を飲んだ。)

「頼む。 離してくれ。」

(夏樹は、狐次郎の腕の中で、抵抗を止めなかった。)

「させるか。」

「忘れろ。」

「あのお嬢ちゃんは、寿命が尽きてる。」

ゴオッ!

「嘘をつくな。」

(抑えきれず、夏樹は叫び、堪えられない思いが。 風を湧き起こした。)



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