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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-240


(狐次郎の瞳が揺れ、夏樹を壁に、押さえ付けた。)

(夏樹から伝わる、冷たい体温が。
狐次郎に、夏樹も青葉と同じだと。 伝えていた。)

(子供の頃、死んでしまった夏樹の身体は。
夏樹の中に秘められた、粒樹の心臓。 “鍵”と呼ばれる、巨大な“時の欠片”の
力により。 生かされているに過ぎない。)

「・・っ!」

(狐次郎は、滲む瞳で、薄ら笑った。)

「ひっひっ。 見ろや。」

「あぁ? この状況を。」

「甘いこと、言ってんじゃねーぞ!」

(特殊部隊が、FOTの結界の周りを、包囲している。)

(聖が、守ることを放棄した。 街の結界は。
薄らぎ。 中で戦っている、FOTと無数の“闇”たちを、今にも。
この世界に、解き放とうとしていた。)

「見捨てなけりゃ、おめーが殺される。」

「この俺が。」

「二度も、てめぇを、死の淵に。 たった一人、残してたまるか。」

***

(狐次郎は、子供の頃を思い出していた。)

『俺は逃げた。』



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