HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-249


(粒樹は、両手を、聖に差し出した。)

コォォォォーッ

(開かれた、小さな両手は。 赤く、血に染まっていた。)

(過去、研究所で失われた、小鳥の命を。 粒樹は、
聖の目の前で。 蘇らせた。)

(けれど、両手に染まる、血の痕跡は消えず。
粒樹の手から、赤く染まる羽根が、裸足の足元に。 零れ落ちた。)

「無垢な命を奪うのは、初めてだった。」

(聖は、過去と向き合い。 囁いた。)

「そうすれば、あの時に、戻れる気がした。」

(閉じた瞳のまま、聖は、微笑んだ。)

(不死を与える、力を持つ。 粒樹を、聖は過信していた。
それ程の、力を持つ、彼女であれば。)

(自分が愛すことが出来ると、信じてしまった。)

「能力者は、人を愛すべきではない。」

「相手の命を奪う場合が、あるからだ。」

『紅い羽根・・。』

『血に染まる、小鳥・・。』

(瞳を開いた、聖の目には。 涙が浮かんでいた。
聖は、鳥籠に、身体を押し当て。 両腕で、囚われている粒樹を、掻き抱いた。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ