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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-283


(夏樹も、行動を起こした。)

ゴオッ・・!

「・・・っ!」

(光の力が、起動する前に、夏樹は、やらなければならないことがあった。)

ビシッ ビシッ・・!

(夏樹は、強い風を湧き起こすと。 鋭い糸をそのままに、
四肢が深く、傷つけられることも厭わず。)

(皮膚が、引き裂かれようとも、構わず。 強い風を纏い、呪縛を破り、
その身を、愛するべき者に向けた。)

「はぁ・・っ、はぁ・・っ。」

「紫苑さん・・。」

(降り頻る雨が、夏樹の血を洗い流し。 紫苑の頬を覆う、白い両手が、
赤に染まる。 涙に濡れる、紫苑の小さな頬に、掛かる髪を払い、
白い指先が、涙を拭い、頬を撫でたが。 雨粒と血が、頬を汚した。)

「(ひっく・・)夏樹くん・・っ。」

(雨の香りと、漂う血の香りが、夏樹を包み。)

(紫苑は、涙を堪えられず、両手で、夏樹の。 傷ついた両腕を掴んだ。)

(束の間、二人は、互いを引き寄せ。 雨と痛みに見失わぬよう、
互いに両手で触れ合いながら。 互いの存在を、確かめ。
雨に消えぬ様、間近に。 目に焼き付けた。)

「紫苑さん、これを・・。」



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