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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-284


(夏樹は、傷つきつつも、震える指先で、白い手に、握り締めていた。
ひとつの、“時の欠片”を紫苑に差し出した。)

「青葉ちゃんの“時の欠片”・・っ。」

(紫苑は、頷き、受け取ると。 胸に抱いた。)

(冷たい一欠片は、もはや何の力も持たない。 だが、紫苑は。 守らなければならないと
感じた。)

(冷たい欠片を持つ手が、震えた。 夏樹の血に濡れた“欠片”は、
紫苑の震える手の中で、滑る。)

「大丈夫。 帰って来る。」

「必ず。」

(夏樹は、言うと。 頷き。 血の滲む手で、紫苑の、欠片を握り締める手を。
上から強く。 握り締めた。)

「夏樹く・・っ!」

(夏樹は、最後に紫苑を強く抱き締め。 身体を離した。)

(深い紺色の瞳は、微笑んでいた。)

ゴオオーッ!

(強い風が湧き起こり、夏樹を。 紫苑から、そして守るべき者たちから、
切り離した。)

(瞬間に、それは起こった。)

「捕えよ!」



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