HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter102 『8月1日(継承)』 102-292
(彩は、光を取り戻した瞳で。 静乃を、見つめた。)
(静乃は頷き、菖蒲の手を両手で握り締めた。)
「・・菖蒲くん・・っ。」
(菖蒲の手を強く握り、うつむく静乃の手の中で。
菖蒲の指先が、動いた。)
『助けて、FOT・・。』
(静乃は祈った。)
(頭上で、結界が崩壊して行く様は、絶望的に思えた。)
(静乃は、脳裏を過る、生死の予感に。
負けないよう、囁いた。)
「大丈夫よ。」
(静乃の言葉に応える様に、菖蒲の指先が、微かに動いた。)
(砕けた、眼鏡の奥の瞼が、僅かに開く。)
「・・(夏樹・・様・・。)」
(静乃には、菖蒲が頷いた様に見えた。)
(薄らぐ瞳に、まだ、菖蒲は。 こちらに向かって吹く風を感じた。)
(風の方に向かい、菖蒲は僅かに顔を向けた。)
(夏樹は、拘束され、身動きすることが出来なかった。)
(だが、まだ風は、皆の元に留まり、守っていた。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』