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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-293


「・・(風が・・)」

『・・、(守って・・くださっている・・)』

(菖蒲は、安堵し。 目を閉じた。)

「菖蒲くんっ!!!」

(力を失う、菖蒲の手を握り締め、静乃は叫んだ。)

チリンッ・・

(糸が絡め取る、夏樹の胸元から。 辺りを破壊して行く、崩壊する結界の衝撃に。
小さな、銀の鎖が、姿を見せた。)

(失いかけた、意識の中で。 深い紺色の瞳は、その鎖の先に輝く。
小さな指輪を見た。)

(崩壊して行く衝撃に、痛みに、悲しみに。 景色が滲んで、見えない。)

(だが、薄れ行く、視界に、銀の指輪の輝きだけは、見失わなかった。)

***

「好きに、生きて良いのよ。」

「夏樹。」

(母の声が聞こえた。)

***

チリリッ・・

(夏樹の胸元で、小さな銀の指輪が鳴った。)



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