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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-62


(青葉は、ベッドの上で。 突然襲う、痛みに耐えた。
同時に聞こえる、不吉な声が。 青葉を闇に、突き落とすようだった。)

(だが、触れたひよこの温もりが。 青葉に、なすべきことを示していた。)

***

「彩先生。 上で、首相がお待ちです。」

(黒いサングラスをかけた、男の一人が。
黒い扉の前に。 彩を迎えに来た。)

「分かったわ。」

(彩は鋭い視線で、振り向き。
汗ばむ、ピンク色にカールする髪の奥。
長い睫毛を瞬かせ。 虚ろな視線で、
暗い地下通路の先。 出口に見える、わずかに射し込む
光に歩き出した。)

(自らの心を、黒い扉の前に残し。
抜け殻になってゆく身体を。
無理やり光の方へ、向けさせた。)

「・・ふぅ。」

(呼吸は乱れ、彩の本能が。 心を取り戻せと警告していた。)

(だが、彩は。 自らに課した課題を成し遂げるべく。
力を振り絞り、黒い扉から遠ざかる。
胸元に輝く、銀の十字架に触れた。
赤いネイルの指先、銀色の鎖の奥に。 上気する胸元に、
黒い幾何学模様が刻まれている。)

(善と交わした魔法の力が、彩を蝕み。 彩を動かしていた。)

(光の先が、かすんで見える。)



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