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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter102 『8月1日(継承)』 102-91
【国のため、命を捧げる栄誉を与えられたと。】
【長い間、国につかれた嘘に。】
(善の身体の中に眠る、フェルゼンが、揺らぎ顔をあげた。)
(記憶の中の、フェルゼンの前に現れたのは。 自分と良く似たシルエットだった。)
(乱れる白い髪。 筋肉が躍動する、巨大な身体。 鋭く強い爪。)
(温度を失う、国土の中で。 体温を逃さぬ様、身体を覆う、豊かな白い毛に、
鋭い赤い瞳。 狼のように、巨大な牙を持つ口が。
白い息を吐き、告げた。)
【ブフッ・・】
【誰も、お前を愛していないということに。】
(善は、頭を抱え、叫んだ。)
「ちがう・・っ!」
(善の中で、フェルゼンは、静かに、思い返した。)
【俺は、飢えていた。
この命を与え続けた。
だがどうだ・・。】
(フェルゼンは、怒りに震える手を、見つめた。)
【誰が、俺を愛してくれた。】
(獣を模した、鋭い爪を持つ。 手のひらに、落ちる涙。)
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