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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter102 『8月1日(継承)』 102-92


(思考の中で、眠るリザが居た。
紫色の、長いソバージュの髪。 淡いピンク色の花弁が敷き詰められた
森の中で。 在りし日のリザは、安らかに目を閉じていた。)

【命の価値に、気づかせてくれたのは、あいつだった。

俺に、愛を教えてくれた。

俺は、俺の為に、愛する者に、命を注ぐことを決めた。】

(だが、現実のリザは、呼び掛けても。
二度と目を覚ますことは無い。)

(特別に設えた、隠れ家の中で。 魔法に繋がれ。
祭壇の中央、ガラスの寝台の上で。 黒い“闇”を貯めたプールの中から。
一滴一滴。 フェルゼンの施す魔法が、吸い上げ、注ぐ。
フェルゼンの命によって、わずかに生き永らえていた。)

(“闇”の力は一滴一滴、リザに注ぎ。
自ら施す“闇の魔術”が、フェルゼンの首筋に黒く煌めく。
幾何学模様の魔法陣から。 命を吸い上げた。)

【生きたいか?

美しい命だ。

俺に、触れさせてくれ。】

(フェルゼンは、禁じられた“闇の魔術”を使い、自らの意思で、
吸い出す自分の命を、リザに注げることに、喜びを感じた。)

(黒く染まる、隠れ家のガラスの天井。
黒い液体が、リザの、凍り付く白い肌を。 黒く染める。
光る一滴は。 リザの口元へ。 黒く染まる唇に注がれる。)



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