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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter103 『四神』 103-15


(中庭を横切る、回廊の入口に。
大きな円に、切り抜かれた、飾り壁がある。)

(円を形作る、壁を通れば。
回廊へ、足を踏み入れることが出来る。)

(だが、大抵の者は。 この壁を通ることが出来ず。
美しい女官に見とれたまま。)

(息を引き取った。)

「お待ちしておりました。」

(幼さを残す女官は、赤い衣をまとい。 両手を祈る様に組むと。
ムユウに頭を下げた。)

(可愛らしく微笑む、赤い唇。 結われた黒髪が長く。
花の髪飾りが、煌めいた。)

「シャラ様は、お部屋でお待ちです。」

(ムユウは頷くと。 美しい緑の着物を翻し、
女官に指示した。)

「支度を。 直に立つ。」

(黒い瓦屋根の回廊を、
足早に進む。)

(池に影を落とす木々。 黒石の向こうから。)

(すでに、主の気配がした。)

ズズッ



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