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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter103 『四神』 103-18


(池の上に映る、見事な回廊と、庭の木々。)

(揺らす風に、主は目を細めた。)

「《神》とは、孤独なものじゃ。」

「人の愛すら、得る事は叶わぬ。」

(涼し気な主の視線に。 ムユウの心は波打った。)

(自らもまた、触れてはいけぬものに、想いを寄せている一人だった。)

「沙羅様。」

(シャラは視線に気づき、ムユウに微笑んだ。
額に花開き、描かれた、赤い模様。)

(陶器の様に、美しい白い肌に、
赤みを差す、華やかな化粧。 赤い口元が微笑み。
池の水面を揺らした風が。
シャラの、黒髪をなびかせ。)

(透き通り、天女の様に纏う、衣を。 たなびかせた。)

(その肌の様に、透明な、花の髪飾りが、
上り行く太陽の光に煌めく。)

「行くか。」

バサッ

(シャラは立ち上がり。 細い身体に纏わる、羽衣を揺らした。)

「四神の内の一人。 “聖”が去った。」



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