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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter103 『四神』 103-37


バキッ・・ ボキッ・・

(闇夜の中。 迷路の中に、うごめく巨大な長い影がある。)

(骨を砕き、貪る音が、遠く。 雨音の向こうに響いた。)

***

ゴロロロッ ピカッ・・!

ザーーーーッ・・

(灰色の城壁の先へ。 中庭に落ちた、淡いクリーム色の光が。
弾け。 煙と、雨水を飛ばした。)

シュウッ トッ・・

(煙と雨水が弾けたところには、二人の人物が現れていた。)

(雨の中、白檀の香りが漂い。
羽衣の様に透き通る、着物の上に、雨粒を受ける。
長い黒髪が靡いた。)

「あいにくの天気じゃなぁ。」

「“灰色の古城”に相応しく。 侵入者を拒むと見える。」

(煙る中庭に、ランプの灯りが揺れる。
手にした女主人は、客人の声を聞き。 香りに目を細め、微笑んだ。)

「沙羅様。」

「ようこそ、おいでになりました。」

「この世を統べる、“赤きバラ”の城へ。」



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