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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter103 『四神』 103-48


***

ポッ ポッ・・

(夕方から降り始めた雨が、強くなり始めた。)

(港町の。 洋館の一室。 主の部屋で、
そっと、閉じられたカーテンに長い指先をかけ。
窓の外の天候をうかがう者が居た。)

「夏の雨が、長引いている様ですね。」

「恵みをもたらすと言いますが。」

「私共にとっても。」

「そう、成りましょうか。」

(窓に流れる雨粒が、夜の色を映す。)

(遠くに光る、港町の灯りに。 窓の外を伝う雨が、
紫に光り、筋を残した。)

「約束の時間です。」

「そろそろ支度をしませんと。」

(正装に着替えた従者は、まだベッドで眠っている主人を気遣った。)

「・・あまり。 勧められる商談ではありませんが。」

(主人に向かい、窓から振り向いたのは、
夜を映す雨と、同じ色の瞳。 すらりと長身の青年の肩に。)

(流れる雨の様に、美しい。 紫色の長い髪が揺れた。)



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