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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter103 『四神』 103-57


「旦那様の命でなければ、どこからどこまでも、

断る理由しか見当たりませんね。」

(反町は、湊吾が仕事を受けると、分かっていた。)

(だが、想いを、思わず口にした。)

「あなたの命は、この額よりも高い。」

(感情を抑え、反町の表情は動かなかった。
それでも、語気を抑えることは、出来なかった。)

「反町。

勝機はある。」

(紫色の瞳が、鋭く睨むのを。 美しく長い指先が。
否定するように、湊吾の資料を指差すのを見て。)

(湊吾は、より間近に、身を乗り出した。)

「相手の欲しいものを、俺達は持っている。

負けるつもりで、商談はしない。」

(湊吾の緑に輝く瞳が。 自分を信じろと言っていた。)

「必ず先方を満足させる。

皆に。 土産を持ち帰る。」

(にやりと笑った、満面の笑みに。)

(反町は、深く頷くと。
もう一度、長い腕を。 湊吾の首に掛けられたネクタイに伸ばした。)



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