HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter104 『風の声』 104-1
(議事堂の地下は、強い力がうごめいていた。)
(幾重にも重なる、特別な物質で創られた、岩盤が。
強固に足元を、守っているはずだった。)
(だが、そう分かっていても。
この足元に、それが。 眠っていると思うと、
おのずと寒気がする。 意識しているから、それを感じるのか。
それとも、踏み締めるごとに、地響きが伝わるのは。)
(すぐそこまで、魔物が迫っているからなのか。)
「滝川先生。」
(大臣の一人に呼び止められ。 滝川は、国会議事堂の
本会議室へと続く廊下で足を止めた。)
「あのプロジェクトは、成功したと。」
「それは、真ですか?」
(振り向いた滝川の整った黒髪が、廊下に輝くシャンデリアに照らされた。)
「・・成功・・?」
(滝川は、含みのある顔で笑った。)
「“化け物”は、簡単には操れんよ。」
「それが出来ると、過信した。 石垣は、長くは持たない。」
(問いかけた、大臣は息を飲んだ。)
「まんまと、骨抜きになった。
石垣の政権は、崩壊したも同然だ。」
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