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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-109


(艶は、風見市の入口に立ち。)

(遠く見える、白い橋と。 上空に張り巡らされた、
異空間通路を、見上げ。 息を吸い込んだ。)

「すぅ・・。」

「魔物の、香りじゃ。」

(艶は、鮮やかな黒い瞳を見開き。 潮風の流れる、
橋の上を見た。)

「来よる。」

(小さな艶は、赤いワンピースに身を包んでいた。
風見市の風が、艶やかな黒髪を、靡かせる。)

(艶は身震いし、夏の暑さを忘れる、恐ろしい気配に。
両腕を抱いた。)

「身代わりにしては、大物よ。」

(夏樹の代わりに、人目を引き付ける、その人物の覇気が。
艶の元に届いた。)

『第一国の女王。 沙羅。』

(艶は迎え入れるべき人物を、眼前に捉えながら。
上空を流れる、幾つもの道筋の中に。 夏樹を無事、通すことを願った。)

***

「はっ・・!」

(紫苑は、息を飲み。 桜ヶ丘の上から、眼下に広がる街並みを、
見た。)



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