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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-115


「奥へ。」

(言葉を発することの出来ない、誠司の身体を抱え。)

(静乃が開いた空間通路を通り。 誠司の前に現れたのは、晃だった。)

ドプンッ

ジュワッ・・

(黒い波を、生み出す木々のバリアで避けながら。 牢獄への扉が開くと同時に、
異空間扉から姿を現した晃は。 誠司と、勝、青木を守り。
自らは、黒い波の中へ飛び込んだ。)

「(ごほっ。) 晃さん・・っ。」

(誠司は、薄れ行く意識の中で。 前方に広がる。
牢獄の奥へ。 黒い波の中に、消えて行く晃の姿を見た。)

「夏樹君・・。」

(誠司は、波の向こうに、手を伸ばした。)

(その向こうに、息子だと、思えるほどに大事な夏樹が捕らわれていた。)

『助けなければ。 なんとしても・・。』

(誠司の手は、届かず。 黒い波に溺れた。)

「(ごぼっ。)」

(紫苑の顔が、瑠衣と千歳の顔が。 誠司の脳裏に浮かんだ。)

「・・守って下さい。」

(誠司は、意識を失い。 倒れた。 同時に、もう一つの異空間扉が開く。)



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